奈良東大寺二月堂のお水取りと陰陽道

  • 2008年2月20日(水) 17:02 JST
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春を迎える行事として奈良東大寺の二月堂における「お水取り」は有名であります。もとは旧暦2月1日から14日間行われる修二会行事の一つです。今日では3月1日より14日間で、12日目の香水を堂下の井戸から三樽の「お水」を汲みます。

この香水は若狭の国から送られる聖水とされ、同じ時刻に若狭明神の神宮寺で送水神事が行われ、神宮・僧呂・修験の神仏混合によりお水送りの行事が行われます。二月堂の開祖実忠和尚が天平勝宝4年(西暦752年)に、菩薩衆である十一面観音の悔過行法の様を、人間の世に移し行なったのが初めだと言われております。

お水は若狭国遠敷明神鎮座地を流れる音無川を水源(鵜の瀬)としています。
奈良二月堂より遠敷明神は北方位の子(ね)の方にあたり子午(南北)の関係と言う事になります。

子の冬至(一陽来復)で始まる陽差しも春分に至る旧二月は春の陽差しも本格の季節です。陰陽道で北方位は一白で水性であり、若狭は奈良の真北で子(ね)の方であります。この若狭から送水されると言うのは「水」の象徴は北方位だからです。

そして子(ね)の方位は「陰極まりて陽となすの一陽来復」の方位であり、陽動への発芽への始動であります。東大寺修二会のお水取りの中には子(冬至)卯(春分)午(夏至)に至る相性(陽動)の理が伺い知られます。

お水取りに際しては椿の造花がいちじるしく堂内を飾ります。椿は「木」と「春」に分解されます。廻り来る「春」の五穀を象徴する「木気」の精気それらを祝うのに最もふさわしい祭場は都の東方位「卯の方」の東大寺二月堂です。

お水取りの根本義念は万象の無事の輪廻より、巡り来る春を今年も迎え、精気と活力を迎えると言う春迎えの行事であります。

古代日本神道は東西における太陽思想が中心でありました。そこに南北思想を持った仏教、そして陰陽道思想が加わり東西南北の揃った自然哲理が生じて来たのです。その思想を受け継ぐ行事が東大寺二月堂のお水取りであります。

すべての遂行は陰陽道・五行説の理法の思想哲理によって成立している行事でもあります。自然の輪廻の中で迎い入れる春への期待を含む行事です。


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