そのおよそ2ヶ月前、、、。
喫茶店「ウファ」は池袋駅から少し離れたところにある。
店内のところどころに花の植木鉢をあしらえたこぎれいな女性向きの喫茶店だった。
優子が泉女子大学に通っていた頃、ときにこの喫茶店ウファを利用していた。
そのころ、この店でアルバイトをしていた杉浦はいつしか優子に片思いをした。
店に集う数人の学生たちの中でも優子は、杉浦にとって、ひときわ目立つ存在で、優子を中心にして
数人の女子学生たちの放つ生き生きとした明るさは、かけがえのない輝きのようだった。
そばを通るだけで美しい花の香りがするように感じていた。杉浦は可憐な笑顔と張りのある優子の声を
思い出すと夜、なかなか寝つけず、想えば想うほど心が高ぶる。だがその気持ちを彼女に伝えられない自分を
情けないと思っていた。しかし店に訪れる優子を目にすると自分の気持ちを見透かされまいとそらぞらしく
なってしまう。なにかしら怖さを感じて、熱い気持ちとは裏腹にまじめなウェイターの態度になるのが、
恋焦がれる人に対してのせめてもの表現方法だった。それに談笑している仲間から優子が一人きりになることは
稀だったことで{優子に告白するチャンスがなかなかつかめない}という言い訳をこしらえて
自分の勇気のなさを慰める。この店に訪れる美しい優子を見ては心が騒ぎだし、店を出る頃には
切ない気持ちになってしまう杉浦だった。