自分に素直になることが大切ですが、ポイントがあります。

公認心理士 / ｽｸｰﾙｶｳﾝｾﾗｰ / 研修講師 / ｺｰﾁ 増田 進明

ご相談ありがとうございます！
内容、読ませていただきました。


ちょっとした心理雑学にも紹介されているように、人は「ギャップ」に弱いというか、
普段厳しくて怖いと思っていた人にちょっとやさしくされると非常に印象に残って、
一気にその人に好意を感じてしまう、といった話と同様で、

普段非行で手を焼いている子供が良いことをすると、周囲がすごく喜んだりすることがあります。
もともと「本当はやさしい人なんだ」と思いたい部分が家族にはあるわけですから、
なおさらのことなのかもしれません。


また、悪く言えば狡猾、良く言えば要領が良いのでしょう。
非行という方向にエネルギーを使ってしまったのが非常に残念ですが、
ある意味スケールが大きい人なのかもしれません。

天性の資質というもので、
良くも悪くも影響力のある、周囲からしたら不思議に見えたりもしますし、
おかしいとご依頼主様がお感じになるのも、いたって自然な感情だと思います。


非行を含め、諸々の問題行動というものは、ごくシンプルに言えば、その人が「不幸」を感じているからするものです。
また、加害者はかつては被害者である、という言葉もあります。

ですから、その従兄の方も子供のころ（つまりまだ弱いころ）、なにかひどく満たされない思いにかられたり、
なにか犯罪被害者というわけではなくても、ひどく傷つけられた経験をしたりして、
その結果問題行動を起こしているわけなので、

そういう意味では同情されるに相応する部分もなくはないのですが、
だからといって非行が正当化されるわけではありませんし、周囲に悪影響を与えていることに関して、
本人が真剣に悔い改める必要があることは間違いありません。


そしてこれは私が少年院の生徒に指導していたことでもあるのですが、
気分が良かったりするときなどに、なんとなく人にやさしくすることは誰だってできるわけで、
そんな感じでときどき人にやさしくしたとしても、それは「きまぐれなやさしさ」であって、
普段は人を傷つけたり、迷惑をかけることを平気でやっているのであれば、それは本当の意味でやさしい人なのではないのです。


ただ、上述した「ギャップ」の話にもあるとおり、周囲の家族からしたら、そんな気まぐれなやさしさが印象に残りますし、
従兄の方を信じたい気持ちがあることから、そんなきまぐれなだけの出来事に、ある種すがりたいような心境なのかもしれませんから、

ご依頼主様からしたら不当な想いがするようなことが今後もあるかもしれません。
そんな現状は不平等、不条理だと私も感じます。


ご依頼主様としては、「もっと寛大にならないといけないのでしょうか？」と書かれていますように、
「許す、赦す」ということを身につけ（これは身につけられます）、精神面で解放されるような方向で解決することが必要なのではないかと
お考えのご様子ですが、

一方で、それでは自分（や妹さん）のひとり泣きというか、譲歩するだけでしかなく、このままなんの変化もないままでいいのか、
なにか従兄や周囲の家族が変わってくれるような方法はないのか、とお考えの気持ちもあるように感じられます。


前者は自分に対して変化を求めるアプローチであり、
後者は周囲に対して変化を求めるアプローチで、両方のお気持ちが混在している心境でしょうから、

前者ばかりを自分に強いるのも精神衛生上良くありませんし、
後者に偏って周囲を変えようとばかりしていても、「他人と過去は変えられない」という格言めいた言葉が示すように、
結局消耗してしまうだけで終わってしまいかねません。


大切なのは、
①ご自身のお気持ちに素直に、正直になることが一番自然であることと、
②そのお気持ちを「より良い方法で」表現することです。

まず①に関しては「バランス感覚」が大切で、前者と後者どちらに偏りすぎず、自分の気持ちを見つめてみて、
「自分が大きくならなくちゃいけない」といった、あまりに自分に求めすぎた考えになっていないか、
あるいは反対に、周囲に求めすぎていないかを、第三者になって自分を見て調節する感覚をこころがけておくとよいと思います。


そうすれば②に対して冷静に考えることがしやすくなり、
自分だけが我慢するだけの結果に終わったり、早まった言動をして周囲に理解されないなどといったことが少なく済みます。


自分に素直になることが一番精神衛生上良いわけですから、素直な気持ちとはなんなのか確認してください。


ご依頼主様としては、
「もっと寛大になったり、従兄のことを赦したりできるものならそうしたい」という気持ちがあるわけなので、
その気持ちが確かに自分のこころの中に存在するならば、
その方向につながるアプローチを自分にすることが、長期的に見て一番スムーズにおさまりがつきやすいですから、
それにつながる行動で、「よりよい方法」を考えるとよいと思います。

（私としては、ご依頼主様はすでにとても寛大な方だと思いますから、無理してさらにもっと寛大にならなくてもよいと思いますので、
なにか自分が変わらないといけないかのような強迫観念があるなら、とりあえずすこし手放してみていただければと思います。
こころがけとしては素晴らしいので頭の片隅には置いておいてほしいですし、あくまでほどほどに、できる範囲であるならば今後も意識してほしいと思いますが、
このような思慮深い文面のご相談をされている方であれば、十分寛大な精神を持ち合わせている方だと思います。）


そして一方で、
「でもそれだけでは自分だけ我慢しているみたいだから、従兄を含め周囲にも変わってほしい」という気持ちがあるわけなので、
その気持ちが確かに自分のこころのなかに存在するならば、
その方向につながるアプローチをすることが、長期的に見て一番スムーズにおさまりがつきやすいですから、
それにつながる行動で、「より良い方法」を考えるとよいと思います。

（私としては、どうすれば家族や周囲の人に自分の気持ちを理解してもらえるのか、周囲が従兄に対してどんな言動をとれば、
従兄のためにも自分のためにもなるのか、について、特に「伝え方」にポイントを置いて考えて実行していただければと思います）



人間は相反する気持ちを同時に持ち合わせることができる生き物ですが、どちらも素直な気持ちなのでそれに正直に生きるのが一番です。
ただ、バランスと実践するときの「どうやるか」が大切です。

冷静に自分を見つめ、素直な気持ちをそのまま浮き上がらせる作業が必要ですので、
誰か信頼のできる方とお話しながらでもかまいませんし、ご自身ひとりで行ってもかまいませんから、まずはそれをしてみてください。

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回答日時：2010年1月 1日(金) 12:38 JST

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