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回答プロ: 勝 桂子
ご相談者:30代/男性
よろしくお願いいたします。
この質問が専門分野に入るのかどうか、よくわからなかったのですが、質問させていただきます。
専門外である場合の失礼はご容赦いただけたら助かります。
先々週、母が急逝しました。通夜、葬儀が終了し、少し落ち着きを取り戻したところですが、葬儀費用で困ったことが起こりました。
葬儀に約250万円ほどかかったのですが、できるだけ家族葬に近い形で行ったため、香典は60万円程度しかなく、残りは、母が生前かけていた保険の保険金を使わせてもらおうと思っていたのですが、生前に全て解約していたらしく、保険契約は何も残っていませんでした。
残った母の財産は、
財産
現預金 100万円程度
最後にもらえる年金
自宅マンション
(マンションは金融公庫からの借入金の担保になっています)
債務
会社からの借入金3千万円(母は会社の役員をしていました)
くらいです。
この場合、母の財産から葬儀費用を支払ってもいいのでしょうか?
自分でも調べてみたのですが、相続財産に該当するので、使用したら、自動的に相続する意志があるとみなされるとありましたが、そうなるのでしょうか?
債務が多いため、できれば財産放棄をと考えていますが…。
また、母の財産を使用しても足りない場合は、喪主である私の手出しでの支払いとなりますか?
また、財産放棄をかけた場合、金融公庫の担保のマンションの扱いはどうなるのでしょうか?
いろいろと質問させていただき、誠に恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
30代/男性 | 日付:2012年11月24日(土) 07:25 JST | 閲覧件数: 2,042
お母さまを亡くされてまだ2週間ですのに、経済的な心配が浮上し、さぞや疲弊されていることと存じます。
まずは、お母さまのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
ご心配の、葬儀費用を故人の財産から捻出することが、民法921条1項の「法定単純承認」(相続する、ということを自ら認める行為)に当たるかどうかとの件について、お答えいたします。
比較的最近の判例では、平成14年7月3日に大阪高等裁判所決定で、故人の葬儀費用及び墓石代を故人の預金から捻出したが、「購入した仏壇及び墓石が社会的にみて不相当に高額のものとも断定できない」として、相続放棄できた判例がございます。
ただし、この判例は、遺族が「債務があることを知らずに」、故人の預貯金からそれらを捻出している点で、ご相談の事例とは異なります。
また、この事例では「葬儀費用等として273万5045円を支出」していますが、これは当時の平均的な規模の葬儀費用として妥当な金額であったといえます。
しかるにここ数年、葬儀の費用相場は激減しております。
お住まいのエリアにもよるので一概には言えませんが、たとえば首都圏で、家族葬等であれば50万円前後のプランも多数用意されている中、おっしゃる250万円の葬儀費用と60万円のお布施が、「社会的にみて不相当に高額のものと判定できないか否か」が、非常に微妙なところであるともいえます。
平成15年当時(上記判例に近いころ)の葬儀相場
http://www.osoushiki-plaza.com/library/data/hiyou-sougi1.html
平成22年発表の同調査による葬儀相場
http://ccfi.jp/contents/info/nsk_no9.html
↑こちらのサイトは葬祭業者さんが分析をしたもののようですが、
“平成17年に発表された日本消費者協会の「葬儀に関するアンケート調査 第8回」の数字。宗教者のお礼や飲食費等を含めて、全国平均約231万円という結果だった。平成22年初頭には第9回結果が発表予定で、速報値では約200万円と下落した。”
とあります。
消費者協会の調査は、業者側にアンケートを取ったものではなく、消費者の実態調査であるため、喪主ではなく支払金額が定かでないのに回答している人もいる、現実に支払われた金額よりも多く記憶しているかたもあるなど、妥当性の面で疑わしいとの指摘を受けることもあるのですが、家庭裁判所が相続放棄の判定をする際に、参考とされる指標の一つとなるであろうことは確実と思われます。
つまり、相談者さまが支払おうとなさっている葬儀費用が平均値を若干上回っており、また、上記平均値は社葬規模のものまで含めた平均ですので、家族葬に限定すれば、一般的なご葬儀よりも高額なほうであると言わざるを得ない金額であろうかと思われる可能性が高いために、裁判所がこれを「社会的にみて不相当に高額である」と判断するか否か、私としても判断がつきづらいところであります。
加えて、「債務があることを既に知り、放棄を視野に入れながら」、預金に手をつけたとなれば、上記判例を参考にすることは難しくなってくる可能性があります。
ところで、お母さまのご自宅マンションを売却された場合、どの程度の金額になるのでしょうか。
マンションの担保権者は3000万円を貸し出している法人のみで、マンション購入時のローンは残っていないのでしょうか?
借入金を上回る額で売却可能であるならば、放棄を視野に入れる必要がなくなるかもしれません。
(不動産業者などに話をする場合は、あくまで、売却する意思はまだないが、試算のためと念押ししましょう。レインズというサイトに売却物件として掲載されてしまうと、売却の意思あり=相続財産に手を付けたと判定されます)。
また、法人役員でいらしたお母さまの借入金ですので、死亡退職年金とある程度相殺してもらえる可能性はないのでしょうか(法人の規模などが定かでないため、話し合いの余地がどの程度あるかはわかりかねますが)。
なお、不動産価値の調査などをしているうちに、相続放棄の熟慮期間である「自己のために相続があったことを知ってから3ヵ月」が経過してしまうおそれがある場合には、家庭裁判所に「限定承認」の申し出をすることで、プラスの財産が残れば相続する、マイナスが多ければ放棄をする、という選択的な方法も残されています。
借入金3千万円のほうが大きかった場合、相続放棄をしなければ、不足分は法定相続人に請求がくることとなるでしょう。
相続放棄をした場合、マンションについても、権利を放棄することになります。
担保権者は、マンションを売却して少しでも回収しようとするでしょう。
>また、母の財産を使用しても足りない場合は、喪主である私の手出しでの支払いとなりますか?
葬儀社は、相談者さまのところに請求をしてきますので、そのようになるでしょう。
まずは、お香典で支払える分だけまとめて葬儀社に支払い、事情を素直に話して、残金はしばらく猶予してもらって、分割で少しずつ支払うなど相談をされてはいかがでしょうか。
その際、相続放棄も視野に入れているため、預貯金に手をつけられないことを説明され、並行して、弁護士に相談されるのがよいと思います。
葬儀社のほうも(こちらも、相手方の規模にもよりますが)、弁護士さんに相談されているとなれば、落ち着くまでしばらくは請求を待ってくれる可能性もあります。
おっしゃる250万円の葬儀代を、過去の判例と照らして「不相当に高額であるとはいえない」と主張できる可能性があるかどうか、複数の弁護士さんに相談してみましょう。
弁護士は、法テラス↓で紹介してもらうこともできますし、私の提携弁護士をご紹介することも可能です(その際は、個人情報のやり取りになるため、有料相談フォームからいらしていただく必要があるかどうか、お手数ですが当サイト運営にお尋ねになってください)。
http://www.houterasu.or.jp/index.html
回答日時:2012年11月24日(土) 23:55 JSTお礼のコメントを書く
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